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2007/11/23

「3丁目の夕日」の内実は

『ビックコミック・オリジナル』で連載されている「3丁目の夕日」が、結構ヒットしているという。自分も10年以上も前に『ビッグコミック・オリジナル』で連載されていたのを立ち読みしていた経験があり、駄菓子屋とかが出てくる場面(そう言えば、映画でも舞台回しとして中心的な存在だったのだが)とかは、自分が通っていた小学校の光景を想起するところだ。

が、「3丁目の夕日」の描写しているのは良く言えば「いい思い出」・実も蓋も無いことを言うと「フィクション」でしかないということに、どれだけの観客が気づいているのだろうか?折も折『朝日新聞』が指摘していたが(既にWebからは消えていた。残念)、現実には「3丁目の夕日」が描写していたほど空も水も綺麗ではなかった。排ガス規制も無く下水道の整備も進んでいなかった時代、空が青いのも澄んだ川もCGの世界の話でしかない。ついでを言うなら、「3丁目の夕日」の後の時代の事件の印象が強い水俣病、その被害が拡大してしまうのもこの時期である。映画の舞台となった1959年には新日本窒素(当時)が患者に見舞金を些少ながら支給しているし、申し訳程度の対策を講じながらも水俣工場ではメチル水銀を排出し続けていたのだ。

話はこれに止まらない。災害対策や安全対策もまだまだ進んでいなかった。この年には伊勢湾台風が中部地方に上陸し、現在から見ても甚大な人的・物的被害を齎した。前後して横須賀市の国立衣笠病院が全焼し、妊婦や新生児が焼死した。治安に目を向けてみても小松川高校殺人や雅樹ちゃん誘拐殺人が起こり、少年凶悪犯の検挙数も現在と比べて多いという事実は意外に知られていない。「3丁目の夕日」の牧歌的な光景も、一つ裏側に回ればとんでもなく凄惨な現実が待ち受けていたのである。

世間では「3丁目の夕日」のヒットからか、その頃の時代を現在と比べて良かったかの様な回顧的な言説が流行っている。「いい思い出」として個々人が抱くのならまだいい。しかし、それによってフィクションと現実を取り違えてしまうのは、変な副作用を齎しはしないだろうか?後藤和智が「3丁目の夕日」の少し後に起こった少年による殺人事件を引いて「俗流若者論」の間違いを指摘しているのを読みながら、自分はそう考える。

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